汎用中型中速ディーゼル海陸を行く

 戦後本邦初の建造となった潜水艦おやしお(初代)の機関構成は、水上高速力を発揮する必要がなくなったこともあり、旧来のディーゼル/電動機からディーゼル・エレクトリックとな った。

おやしお (潜水艦・初代)(Wikipediaより)
潜水艦おやしお(初代)(出典:おやしお (潜水艦・初代),Wikipediaより)

 1960年就役の本艦の主機は、敗戦を境に一旦系譜が途絶えた日本の艦船用ディーゼルの替わりに、川崎M.A.N. V8V22/30mMALが2基搭載されていた。この4サイクル予燃焼室式ディーゼルは、1955年から川崎重工がライセンス生産を開始していたものであった。
 形式はV(エンジンシリーズ記号)8(気筒数)V(行程数,2サイクルはZ)22(cm,気筒内径)/30(cm,行程)であるようだ。よって、第二次世界大戦中Uボートの主機関として使用された、MV40/46系列と直接の繋がりはない。なお、そちらは戦中MAN社に勤務していたフランス人技師が、戦後SEMT社を設立して改良型を製作・販売している。

 VV22/30系列は6~16気筒をラインナップし、中型ディーゼルエンジンとして広く用いられた。以後、海上自衛隊の潜水艦はおおしお~うずしお型潜水艦の長きにわたって本系列エンジンを主機としており、駆潜艇かり型/みずとり型、輸送艦あつみ型/みうら型など水上艦にも搭載された。

 一方、その頃無煙化を推進していた国鉄では、DF50形ディーゼル機関車の500番台以降に、本系列の6気筒モデルV6V22/30MA(1,200ps)を採用している。

DF50(500番台)(Wikipediaより)
DF50(500番台)(出典:国鉄DF50形ディーゼル機関車,Wikipediaより)

 また、同時期に建造された青函航路の津軽丸型車載客船7隻と、続く渡島丸型車両渡船の前期建造3隻の主機にも、V8V22/30mALが4基をフルカン継手で1軸に接続する形で8基搭載されている。

津軽丸 (2代)(Wikipediaより)
津軽丸型車載客船(出典:津軽丸 (2代),Wikipediaより)

渡島丸 (2代)(Wikipediaより)
渡島丸型車両渡船(出典:渡島丸 (2代),Wikipediaより)

 余談であるが、車両甲板に機関室高さを制約されてこのような主機構成を取った津軽丸型、主機のピストン数は64、吸排気バルブ数は128になる。ピストン抜きとバルブ摺合せの作業の手間は想像したくない。

八甲田丸機関室(出典:青森市港湾文化交流施設ホームページ)
八甲田丸機関室(出典:森市港湾文化交流施設ホームページより)

 さて、先述のDF50形、0番台は何のエンジンを搭載していたかというと、三菱Sulzer 8LDA25A(1,060ps)である。この系列機関は、1930年代から鉄道用ディーゼル機関として世界各国で採用実績があり、本邦ではDD50形から搭載されている。
 表記は8(気筒数)LDA(エンジンシリーズ記号)25(cm,気筒内径)であるようだ。海に戻って艦船用としては、おやしおに続く小型潜水艦、はやしお型/なつしお型の主機として6LDA25Bが搭載された。

はやしお型潜水艦(Wikipediaより)
はやしお型潜水艦(出典:はやしお型潜水艦,Wikipediaより)

 DF50形以降、国鉄は1,000馬力級ディーゼル機関の自己開発に乗り出し、DD54を除けば、日本の鉄道に再び汎用ディーゼルが採用されるのはJR化後のDF200形まで待たなければならない。

JR貨物DF200形ディーゼル機関車(0番台)(Wikipediaより)
DF200形0番台(出典:JR貨物DF200形ディーゼル機関車,Wikipediaより)

 DF200形0番台に搭載されたMTU 12V396は系列機関を合わせて生産台数が1万台を越えるベストセラーであり、ドイツの209型、212A型、214型潜水艦の主機として用いられる他、軍用艦艇の発電用ユニットとしても採用されている。

209潜水艦(Wikipediaより)
209型潜水艦(出典:209型潜水艦,Wikipediaより)

 以上、共に中型中速ディーゼルを用いるディーゼル機関車と潜水艦の割と意外かもしれない関係。

 ちなみに、戦前の鉄道省が輸入したDC11形ディーゼル機関車にはMAN W6V28/38が搭載されており、本系列は戦前ソビエトの潜水艦の主機として採用されたもの。
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