戦時商船標準機関始末記(その2)【2017/3/12改稿】

 戦後、第一日新丸以外にもう一隻戦時商船標準機関1062VF115を積んだ船がいる。同じく大洋漁業所属の第二天洋丸(戦時標準船1TL型)で、当初冷凍工船として竣工したものの、後にタンカー市場の好況を受けて油槽船に改装されている。

第二天洋丸一般配置図1
第二天洋丸一般配置図(出典:造船協會會報,Vol. 1951 (1951) No. 83)

 後部船橋に"MOTOR LAUNCH"なるものが4隻搭載されているが、鋼製大型発動艇とされる14mの方はどうやら旧陸軍で使用した大発そのものを搭載したようだ。では10mの方は小発かというと、こちらは木製らしいのでよく分からない。
 大洋漁業の冷凍工船乗組員の回想にも旧軍の大発は登場し、大発のW型になっている船首船底に波が入って猛烈に縦揺れした、とのことである。陸軍船舶部隊からの払い下げ品という主機は故障が多発し、予備エンジンと頻繁に交換したと伝えられている。

 なお、冷蔵倉は一見二重底に見えるが、工期の関係もあって非水防とのことである。

 62VF型には第一日新丸、天洋丸に搭載された10気筒5,400馬力の他に、先立って製造された12気筒6,500馬力のモデルがある。1262VF115と命名されたそれは、大阪商船の報国丸級貨客船3隻(報国丸,愛国丸,護国丸)に2基ずつ搭載され、いずれも海底に沈むこととなった。

 第二天洋丸は東京オリンピックが開催された1964年(昭和39年)、第一日新丸→錦城丸は翌昭和40年にそれぞれ解体され、その生涯を平和の中で閉じている。

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 さて、この第二天洋丸であるが、本船は1TL型22番船大橘(だいきつ)丸(大阪商船)として、1944年(昭和19年)11月に川崎重工神戸にて起工、翌20年4月に進水したものの、5月に工事中止となって放置されていた。戦後大洋漁業が購入して名を改め、昭和22年6月に艤装工事を再開したものである。

 南氷洋捕鯨船団の附属冷凍工船としての艤装を調えるにあたり、未だ戦後の資材不足の続く中、装備の調達にはひとかたならぬ苦労があったようである。その一つが先に記した主機で、これも第一日新丸のものと同様仕掛け品を完成させたもののようだ。
 なお主機の生産番号順では第二天洋丸→第一日新丸で、三井造船では戦後の大型機関生産再開にあたり、始動式には紅白の幔幕がかけられ、喉自慢大会が開催されたという。

第二天洋丸一般配置図2
第二天洋丸一般配置図(中甲板)(出典:造船協會會報,Vol. 1951 (1951) No. 83)

 さらに、冷凍工船には冷凍設備、すなわち鯨肉を速やかに凍結させる急速冷凍装置と、そこで冷凍した鯨肉を保管する冷凍倉が必要になるが、この調達にも苦労の跡が見られる。一番の問題となったのは、冷凍機を運転する動力であったようだ。

 冷凍機は言ってみれば冷媒の圧縮機で、これは大洋漁業が手配したのだが、元々は陸上施設で使用していたものの転用らしい。これを動かす電動機がない。それまで使っていたものは使えない。なぜなら陸上施設の電源は交流、船舶の電源は当時ほとんどが直流だったからである。
 川崎がどこからともなく調達してきたのは、なんと航空母艦鳳翔のエレベーター用電動機であった。日立造船築港で解体された際の発生品であろうが、よくぞ見つけてきたものである。

 4基据え付ける冷凍機のうち、150馬力3基についてはこれで手当が付いたが、残る300馬力1基については、川崎で引き揚げた潜水艦の主電動機の改造に成功したのでこれを用いた、となっている。どうも定かではないが、建造中止の後枕崎台風により神戸沖で沈んだ伊号第一潜水艦 (2代)の主電動機を引き揚げてきたもののようだ。

 最後に、これら冷凍機の動力電動機に電力を供給する発電機である。これもない。やむを得ないので川崎お得意の潜水艦、この補助発電機を2基持ってきて缶室内に据えつけた。非常用発電機の2機と合わせて計4基の内訳は、2基が同じく伊1からの引き揚げ品、残り2基が仕掛品を完成させたものらしい。定格出力は冷凍機用/非常用がそれぞれ350/370kWとなっているが、いずれも元は巡潜などに搭載された400kW補助発電機であるように思われる。

 こうして6ヶ月で艤装を終え、第二天洋丸は第2次南氷洋捕鯨から5年間、冷凍工船として南氷洋に出漁した。昭和27年にタンカーに改装されたため、これら冷凍設備は撤去されたものと思われるが、その後も第7~17次南氷洋捕鯨に中積油槽船として参加している。

CiNii 論文 - 冷凍鹽藏船第二天洋丸の建造に就て

CiNii 論文 - 第二天洋丸の計劃に就て
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